108票差の逆襲――宮崎町政、初陣予算に旧体制議会が放った”否決という名の一手”
今までになかった事態が起こっている。
黒岩町政から宮崎町政に変わった草津町において、令和8年度の一般会計予算が3月の定例議会で反対多数により否決された。まさにこれは宮崎政権にとっての試練であり、議会の政治構造が大きく変わったことを象徴する出来事だ。
反対に回ったのは、黒岩卓議員、上坂国由議員、金丸勝利議員(公明系)、安井尚弘議員、有坂太宏議員(共産系)、安西努議員、直井新吾議員の各面々。賛成は、市川祥史議員、小林純一議員、湯本晃久議員となった。
この一般会計予算の否決というのは、町長選後の政治的対立が議場に持ち込まれたといってよく、あたかも代理戦争の様相を呈している。反対派にとっては、新町長の政策遂行をそのまま容認することには強い抵抗感があり、それが反対票へとつながったのだろう。
なぜ、新たに発足した宮崎町政の根幹をなすと言っても過言ではない一般会計予算が否決されたのか。
まず、今年1月に行われた町長選挙では、わずか108票差という番狂わせともいわれる逆転劇で勝ったのが現宮崎町長である。下馬評では黒岩前町長が有利との情勢が大方の見方だった。しかし、ふたを開けてみれば僅差ではあるが宮崎町長が見事初当選となった。このため、黒岩前町長を応援していた多数の議員は混乱したに違いない。その中でも、共産党の有坂議員、元議長で事故後に復帰した黒岩卓議員などは、その最たるものであろう。
そうした背景があり、今回の予算においても宮崎町長に“注文を付ける”狙いがあるという見方は間違いないであろう。
有坂議員は、予算案の具体的中身以上に、新町長の政治姿勢や政策の方向性そのものに疑義を呈し、前町長のもとで決まっていた煮川の湯の建て替え、大滝乃湯周辺の整備について、新たに宮崎町長の構想を示して予算を執行すべきと答弁している。すでに交付金も予定されている事業に対して異を唱えるにしては、独自の構想を示さなければ説得力に欠ける。
また、今回賛成に回った湯本議員の答弁の中で、有坂議員が12月の定例会議にて、フランスへのプロモーション活動が一般町民公募ではなく、協会役員の視察旅行の意味合いがぬぐい切れないという発言に強く反発し、実際のプロモーションイベントに対して「視察旅行」というネガティブなレッテルを貼るような発言をし、それを訂正することなく批判を続ける態度を議場で問題視している。
さらに、温泉感謝祭において、県知事、市町村の首長、各地の観光団体、報道各社が来場している中、形式上は来賓という扱いでありながら主催者側にいる立場の人間が、接待側としての振る舞いをせず、来賓席から動こうとしない態度に対して、「観光協会の苦労が分かるのか」と非難している。湯本議員も相当頭に来ていることがうかがえる。
一見華やかに見えても、観光協会や旅館組合のような役職に就く方々は職員ではないため給与が出るわけではなく、ほぼボランティアで草津温泉のPRをしているとも聞く。そのような実態を知った上での発言なのか、疑問である。
また、黒岩卓議員においては、慣例として副町長人事は事前に議員へ伝えることになっているが、それが宮崎町長にはなく、「伝えてほしかった」という牽制のパンチを放っている。さらに、平成29年9月21日から平成29年10月13日にかけて設置された固定資産税課税調査特別委員会に関する請願が前黒岩町長からなされており、黒岩卓議員が紹介議員となって議場で宮崎町長を批判する場面もあった。黒岩前町長も、10年前の話を請願という形で現町長攻撃の材料にしている。「町の発展を見守っていきたい」と発言していたものの、3月になり宮崎政権が動き出した矢先に請願で攻めているところに、いまだ町長職への未練が色濃く見て取れる。
ところで、この黒岩卓議員は、2022年に長野原で車を運転中、バイクとの接触事故を起こし、二人を死傷させて議員を辞職したが、その後執行猶予中に選挙へ出馬し当選した人物である。法的には許されても、道義的・倫理的に自分が立候補してよいのか疑問を持つのが普通の感覚ではないだろうか。おそらく出馬に際しては遺族への謝罪や理解を得た上での行動だと思うが、その経緯についてはぜひ本人に説明してもらいたいところだ。
とはいえ、ある意味では“議会は正常に動き出した”とも見て取れる。議会の役割は、行政の適正な運営へのチェック機能というのが最大の仕事である。政局に絡めようという思惑が見え隠れし、そのような見え透いた動きがあったとしても、前政権にはなかった「批判する目」というのは大切な部分であろう。町民にとっては町政が円滑に進むことが望ましいが、厳しくチェックすることもまた必要である。
ただし、批判のための批判と映る上記二人の町議の、あからさまな政治臭は鼻につく。
我々は、政局論争には強く反対する。真に政策論争によって町の運営を進めていくのであれば、それは町民の利益につながるだろう。しかし、政局とは権力争いにほかならない。有坂議員、黒岩卓議員の議場での発言を見る限り、「反対のための反対」という印象を強く受ける。町民が求めているのは、政治的代理戦争ではなく、草津町の未来を見据えた建設的な政策論争だ。親分のために働くのは結構だが、町民生活を滞らせてはならない。いかに町民が暮らしやすく、住み続けたいと思える町づくりを進めるかこそが、本来問われるべき姿勢である。


